後遺障害の併合・相当・加重に関する基礎知識
交通事故に遭ったことが原因で後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害等級認定に申請することができます。
しかし交通事故の前から障害があり、さらに事故によって障害が残った場合や、二カ所に後遺障害が残った場合などには「併合」「相当」「加重」といった別の取り扱いを受けることになります。
それぞれどんな考え方になるのか、併合・相当・加重の基礎知識を解説していきます。
併合とは
交通事故によって残る後遺障害は、1種類とは限りません。
複数の後遺障害を合わせ持った場合には、それぞれの後遺障害等級を合わせて、最終的に1つの等級を定めます。
このことを「併合」と言い、交通事故後の後遺障害では比較的多い案件であると言えます。
併合の原則や、併合に当てはまらない例など見ていきましょう。
併合の4つの原則
併合には4つの原則があるので、原則に伴い等級が決められます。
- 5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合は、最も重い等級を3つ繰り上げる
- 8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合は、最も重い等級を2つ繰り上げる
- 13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合は、最も重い等級を1つ繰り上げる
- 14級の後遺障害が複数ある場合は、数に関係なく14級のまま
基本的には、複数ある後遺障害の中でも重い症状の等級が繰り上げられることになり、14級のみそのままの等級扱いになります。
併合が例外になるケース
併合は4つの原則をもとに等級が決められますが、併合にも例外となるケースがあります。
どういった場合に例外になるのか見ていきましょう。
みなし系列
1つ目のケースは、「みなし系列」と呼ばれる場合です。
同じ部位の系列が異なる2つ以上の後遺障害がある場合、併合ではなく同一系列として取り扱われます。
例えば、同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害や、両眼球の視力・調整機能・運動・視野障害の各相互間です。
組み合わせ等級
2つ目のケースは、「組み合わせ等級」と呼ばれる場合です。
後遺障害の部位も系列も異なる2つ以上の後遺症がある場合でも、左右両方に障害が残った場合には併合ではなく、組み合わせ等級として扱われます。
例えば、両上肢・手指の欠損又は機能障害などです。
障害の序列を乱す場合
併合して等級を繰り上げることで、障害の序列を乱すような場合にも併合は適用されません。
併合して等級を繰り上げると、その等級よりも軽い症状であるにも関わらず、同じ等級になってしまうような場合です。
こういった際には、直近上位または下位の等級が用いられます。
併合できないケース
1つの障害を複数の系列で評価している場合に併合は適用されません。
また、1つの後遺障害に他の後遺障害が通常派生する関係である場合にも適用されません。
相当とは
交通事故によって後遺障害が残った場合、後遺障害等級表に定められたものを基準にして等級が判断されます。
しかし、後遺障害等級表に該当しない後遺障害が残る場合もあります。
そういった場合に、後遺障害等級表に定められていなくても後遺障害等級として認定されることを「相当」と言います。
相当として認定されるもの例としては、味覚障害や嗅覚障害、外傷性散瞳、耳鳴りの後遺症などが挙げられます。
これらは11級~14級相当の後遺症害として認定されます。
後遺障害等級表には交通事故によって起こりうる全ての後遺障害が記載されているわけではないので、交通事故前とは違う変化がある場合には医師や弁護士に伝えましょう。
加重とは
もともと障害があり、交通事故によって障害のあった部位が更に程度が重くなることを「加重」といいます。
この場合、既にあった障害は交通事故によるものかは関係なく、どういった事情による障害かは問われません。
同じ部位や、部位は違うものの同じ系列に後遺障害が残ったケースで適用されるだけでなく、部位や系列も違う場所に後遺障害が残った場合でも適用されることがあります。
加重の場合の保険金の考え方
後遺障害が加重として認められた場合、加重後の後遺症害の保険金から既存の障害の保険金額が控除された金額が支払われることになります。
例えば、もともと障害5級だった人が、事故によって4級の後遺障害と認定された場合には、4級から5級を差し引いた金額が支払われることになるのです。
ただし、これは同一部位によるものであり、既存の障害等級を交通事故による後遺症害等級が上回る場合です。
もし、別の部位でも同系列の場合であれば、交通事故後の後遺障害等級と既存の障害等級を併合し、併合等級と既存の障害等級の差額が支払われることになります。
また、別の系列である場合には、既存の障害等級は関係なく交通事故後の後遺障害等級分が支払われることになります。
まとめ
交通事故による後遺症害等級の「併合」「相当」「加重」の知識を紹介してきましたが、自分の後遺障害を自身で判断することはとても難しいものです。そのため、弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故に関する実績の多い吉田弁護士であれば、後遺障害に詳しい行政書士と連携しながら正しい等級認定が受けられるようサポート致します。
後遺障害における不安や不明点がある場合には、まずは初回の無料相談をご利用ください。