「成年後見人」とは?意思疎通ができない被害者がいる場合の対応

交通事故によって意識が戻らない状態になってしまったり、高次脳機能障害によって判断能力が低下してしまった場合、家族は悲しみや不安を抱えることになります。
被害者や被害者家族には、加害者や保険会社より損害賠償を受け取る権利があります。
しかし、本人の意思疎通が難しい状態ではどうすればいいのか分からないと途方に暮れてしまいます。
こういった場合に適用されるのが、「成年後見(人)」という制度です。
成年後見(人)とはどういった制度であるのか詳しく解説していきます。

成年後見(人)制度と条件

交通事故によって重度の意識障害や高次脳機能障害が残った場合、事故に遭った本人が損害賠償の請求をすることは非常に困難です。
しかし、損害賠償について代わりに家族が訴えを提起することは出来ません。
そういった場合には、本人の代わりに手続きを行う成年後見(人)制度を利用する必要があります。
成年後見(人)制度の内容や、利用するための条件を見ていきましょう。

成年後見人とは

被害者が何らかの障害や怪我によって意思疎通が困難な場合には、被害者の代わりに交通事故の損害賠償手続を進める人が必要になります。
また、損害賠償だけではなく日常の生活の中でも財産管理や不動産などの契約も自分では行えないため、代わりにサポートしてもらわなくてはいけません。
こういった本人が意思を表示できない場合に,本人に代わって必要な契約など法律行為を行う権限を有する人を「成年後見人」と言います。

成年後見(人)制度適用の条件

成年後見(人)は誰でも利用できるわけではありません。
名前の通り、成年なので被害者が成人(20歳以上)である必要があります。
もし未成年の場合であれば、親権者である親が法定代理人になるため、成年後見人を立てる必要がないからです。
また、被害者と意思疎通が困難であることが認められなくてはいけません。
つまり、被害者が意識不明であることや、意識があるものの判断能力や決断能力が低下している状態であることが必要です。
後遺障害等級では1級~9級の状態の場合に当てはまることがあります。

成年後見の手続や成年後見人として選任される人について

成年後見(人)制度を利用したい場合には手続きが必要になります。
また、どんな人でも成年後見人に選任されるわけではありません。
必要な手続きや、選任される人について紹介していきます。

成年後見の申立て手続き

成年後見人を立てるには、成年後見の申立て手続きを行う必要があります。
ただし、この申立てができるのは本人や配偶者、4親等内の親族や市長村長、検察官などに限られています。
成年後見の申立て手続きは、後見開始申立書に必要書類を添付して、家庭裁判所に提出するだけですが、たくさんの資料の収集が必要になります。
この申立書は、被害者の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する必要があります。
申立書に添付する必要書類はいくつかありますが、その中でも医師の診断書は非常に大事なものです。
本人に判断能力がないことを診断書の記載内容から家庭裁判所は判断します。家庭裁判所より医師に鑑定依頼が命じられ,その結果で判断されることもあります。

成年後見人に選任される人は?

成年後見人に選任される人の第一候補者は親族になります。
配偶者や両親が単独で成年後見人になることができますが、後見監督人に弁護士などの専門家をつけることも可能です。
また、親族に適切な成年後見人がいないと家庭裁判所が判断した場合には、弁護士等の専門家が成年後見人になります。
成年後見人に選ばれた人は、家庭裁判所に金銭関係について定期的に報告を行います。

成年後見申立ての手続は弁護士に依頼できる?

交通事故によって介護や入院が続く被害者本人はもちろんですが、家族も手続きや示談交渉をすることは精神的にも肉体的にもダメージが大きいものです。
時間や手間もかかるので、少しでも軽減したいと考えるでしょう。
そこで、面倒な成年後見申立ての手続は弁護士に依頼することができます。

手続きに必要な資料収集や作成の手間が省ける

後見開始申立書には、たくさんの資料の添付が必要ですし、資料の作成もしなくてはいけません。
戸籍謄本や住民票などの基本資料から、申立事情説明書や後継人等候補者事情説明書、親族の関係図、財産資料など非常に多くの資料を要するのです。
これらを自分自身もしくは家族が集めることや、作成するには多くの時間と手間がかかります。
弁護士に依頼することで、必要な書類の収集や作成の手間を大幅に軽減できます。

手続きだけでなく、示談交渉までサポート

交通事故に遭ったことで重度の後遺障害が残ってしまった場合、被害者を看病しながら成年後見の手続きや相手の保険会社との交渉を進めることは大きな負担になります。
弁護士に依頼すれば、成年後見申立ての手続きだけでなく、保険会社との示談交渉までサポートが可能になります。
しかも、相手の保険会社は賠償金額を低く提示してくることが大半なので、弁護士の介入によって賠償金額が大幅に増額できることが期待できます。

まとめ

成年後見人は、自身で判断や決断が難しいからこそ被害者や被害者家族の味方になる存在です。
交通事故によって残った後遺障害に対して適切な損害賠償を受け取るためにも、成年後見人を立てる必要があります。
当方では、成年後見の申立てから、経験豊富な弁護士による示談交渉までのフルサポートが可能です。