後遺障害の逸失利益の計算方法

交通事故による怪我が治療してもこれ以上治ることはなく、後遺障害として残ることになった際には、加害者に慰謝料や逸失利益を請求することができます。
後遺障害には等級が1~14級まであり、認定される等級によって損害賠償金額が変わります。
加害者の加入する保険会社と示談交渉を進める上で逸失利益が登場してきますが、本当に適切な金額であるのか分からないという人が多いでしょう。
そこで、適切な金額を提示されているのか知るためにも、逸失利益の計算方法を紹介していきます。

後遺障害における逸失利益とは

交通事故が原因で後遺障害が残った場合、労働能力が低下もしくは喪失する可能性があります。
そうすると、将来に得られるはずだった収入が減ることになるので、被害者は損害を被ります。
将来に働いて得られるはずだった収入と、後遺障害によってこれまで通りに働けなくなってしまった金額の差額を逸失利益と言い、加害者の保険会社に請求することができるのです。
ただし、逸失利益の算定方法には基準があります。
これは、学生が事故に遭った場合であれば現実に将来どのくらいの収入を得られるのか分かりませんし、現在働いている人でも現在の収入と将来の収入が同じとは限らないからです。
そのため、後遺障害の等級に伴って、労働能力がどのくらい減少するのかなど客観的な数値が決められています。

逸失利益の計算方法

後遺障害における逸失利益の計算方法は、基本的には下記の計算方式が用いられます。

基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数

それぞれの項目はどういったものであり、どのように算出するのか細かく見ていきましょう。

基礎収入の算出方法

基礎収入は、交通事故に遭う前の収入が基準になります。
ただし、以下の場合には賃金センサスと呼ばれる毎年厚生労働省が発表する「賃金構造基本統計調査」によって算定されます。

  • 幼児や生徒、学生など
  • 専業主婦
  • 30歳未満の労働者(実収入が賃金センサスの記載以下であるものの、見込みを証明できる場合)

これらのケースである場合、全年齢平均賃金もしくは学歴別平均賃金によって基礎収入が計算されるのです。
また、無職者の場合でも、就労の可能性や働く意欲がある場合には従前の収入を参考に計算されます。

労働能力喪失率の算出方法

労働能力喪失率とは、交通事故が原因による後遺症害によって労働能力がどれほど低下もしくは喪失してしまったのか数値で表したものです。
労働能力喪失率は、認定された後遺障害等級によって5%~100%まで決められています。

後遺障害等級 労働能力喪失率
第1級 100/100
第2級 100/100
第3級 100/100
第4級 92/100
第5級 79/100
第6級 67/100
第7級 56/100
第8級 45/100
第9級 35/100
第10級 27/100
第11級 20/100
第12級 14/100
第13級 9/100
第14級 5/100

ライプニッツ係数の算出方法

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を用いて逸失利益が計算されますが、このライプニッツ係数とは中間利息を控除するための計算式です。
逸失利益は、本来であれば1年や1ヵ月毎に得るはずの収入を一括請求することになります。
すると、本来得る利益以前に全額が支払われるので、その時期までに利息が付きます。
利息を控除しなくては、被害者は利息分の利益も得ることになるので、逸失利益から控除するのです。

喪失期間(年) ライプニッツ係数 喪失期間 ライプニッツ係数 喪失期間 ライプニッツ係数
1 0.9524 17 11.2741 33 16.0025
2 1.8594 18 11.6896 34 16.1929
3 2.7232 19 12.0853 35 16.3742
4 3.5460 20 12.4622 36 16.5469
5 4.3295 21 12.8212 37 16.7113
6 5.0757 22 13.1630 38 16.8679
7 5.7864 23 13.4886 39 17.0170
8 6.4632 24 13.7986 40 17.1591
9 7.1078 25 14.0939 41 17.2944
10 7.7217 26 14.3752 42 17.4232
11 8.3064 27 14.6430 43 17.5459
12 8.8633 28 14.8981 44 17.6628
13 9.3936 29 15.1411 45 17.7741
14 9.8986 30 15.3725 46 17.8801
15 10.3797 31 15.5928 47 17.9810
16 10.8378 32 15.8027 48 18.0772
喪失期間 ライプニッツ係数 喪失期間 ライプニッツ係数
49 18.1687 65 19.1191
50 18.2559 66 19.2010
51 18.3390 67 19.2391
52 18.4181
53 18.4934
54 18.5651
55 18.6335
56 18.6985
57 18.7605
58 18.8195
59 18.8758
60 18.9232
61 18.9803
62 19.0288
63 19.0751
64 19.1191

労働能力喪失期間は、基本的には67歳までの期間とされ、症状固定された年齢から67歳までの期間を指します。
例えば、30歳で後遺障害が残ったという場合には、67歳までの37年間が労働能力喪失期間となります。
しかし、後遺障害の等級によってはもっと短い期間しか労働能力喪失期間がないと判断されるケースもあります。
むち打ち症の後遺障害で14級と認定された場合であれば5年前後、12級であれば10年前後と考えられることが多くなっています。

また、60歳近い年長者の場合には、余命年数の半分くらいの期間と67歳までの期間と比較して長い方を労働能力喪失期間とします。

逸失利益を増額させるには弁護士に相談すべき

逸失利益の計算をするには、正しい後遺障害等級に認定される必要があります。
後遺障害等級の認定は、保険会社が代わりに手続きをすることもできますが、保険会社はマニュアル的な手続きになります。
納得のできる等級に認定されるには、弁護士に任せることが得策でしょう。
必要な書類などを収集・作成するだけでなく、後遺障害等級の認定を有利に進めるようにサポートしてもらえます。
また、逸失利益の金額を保険会社は低い金額で提示することが多いので、弁護士に依頼することで正しい計算式で金額を算出して保険会社と交渉してもらえます。

まとめ

交通事故で保険会社との示談交渉や後遺障害等級の手続などを行うには、専門的な知識を必要とします。
そのため、交通事故問題に詳しい弁護士に相談するほうが、被害者にとってより有利になる可能性が高くなります。
後遺障害や逸失利益など交通事故の問題で悩んでいる場合には、ぜひご相談ください。