高齢者や子どもの死亡事故とその慰謝料相場について

交通事故の被害者が死亡してしまった場合、突然のことで動揺やショックが大きく、ご遺族は心身共にダメージを受けます。
しかし、ご遺族には死亡慰謝料を請求できる権利があるので、悲しみの中でも示談交渉に挑まなくてはいけません。
もし被害に遭ったのが子供や高齢者の場合は、どのように慰謝料は算出されるのでしょうか?
年齢によって慰謝料相場がどのように変わるのか解説していきます。

年齢と死亡慰謝料は関係しているのか?

家族が死亡事故に遭ってしまうという経験をしたことがない人が大半ですので、死亡慰謝料に関する知識がないことがほとんどでしょう。
高齢者や子供が交通事故によって死亡してしまった場合、余命などが加算されるのではないかと考える人もいるかもしれませんが、年齢と死亡慰謝料は関係しているのか見ていきましょう。

死亡慰謝料の考え方

死亡慰謝料には2種類のものがあり、被害者本人に対しての慰謝料と、被害者遺族に対しての慰謝料があります。
また、慰謝料には基準が設定されており、自賠責保険・任意保険・裁判の3つの基準で構成されています。
自賠責保険基準<任意保険基準<裁判基準というように慰謝料が高額になっていきますが、それぞれどのような慰謝料になるのか相場を見ていきましょう。

裁判基準 死亡慰謝料
一家の支柱 2,800万円
母親・配偶者 2,500万円
その他 2,000~2,500万円

※赤い本参照

一家の支柱とは、その家庭の経済的な支柱を指すので、父親だけでなく母親や子供にも当てはまることがあります。
配偶者は、夫婦の相手側のことを指しますが、妻や一家の支柱ではない夫を指すことが多くなっています。
そして、その他の欄に当てはまるのが、独身の男女や子供、高齢者になるのです。

任意保険基準 死亡慰謝料
一家の支柱 2,000万円
18歳未満の無職者 1,500万円
高齢者 1,450万円
その他 1,600万円

任意保険基準では、やはり裁判基準と金額が大きく異なりますし、考え方も違います。
ただし、裁判基準で算出する場合には弁護士に依頼した上で、適切な金額を加害者に提示する必要があります。

自賠責保険 (※) 死亡慰謝料
死亡した本人分 400万円
請求者1人の場合 本人分に550万円を加算
請求者2人の場合 本人分に650万円を加算
請求者3人以上の場合 本人分に750万円を加算
本人に被扶養者がいた場合 200万円を加算

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した死亡事故については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した死亡事故については、死亡した本人の慰謝料は350万円です。

自賠責保険の請求者は、被害者の父母や配偶者、また子供となっていて、請求者の人数で金額が加算されていきます。

死亡慰謝料は年齢で算出するものではない

死亡慰謝料の相場について見てきましたが、年齢で分類されているわけではなく、「一家の支柱」や「配偶者」など家族内での関係性で分類されていることが分かります。
高齢者と幼い子供とでは余命などに違いがあるので、慰謝料に違いがあるように考えられがちですが、実際には年齢で慰謝料の基準を明確に示しているものはありません。
つまり、死亡慰謝料は年齢で算出するものではないのです。

もちろん裁判では幼い子供の方が多額の慰謝料を認められているケースもありますが、死亡慰謝料は遺族の精神的に受けるダメージに対して支払われるものなので、年齢で大きく加算されるものではありません。

損害賠償で気をつけるべきポイント

死亡事故の場合には、慰謝料以外の損害の賠償請求も大切です。
子供や高齢者の場合には、注意すべき点がそれぞれあるので、押さえておきましょう。

高齢者の場合

高齢者が交通事故によって死亡した場合、受給していた年金を損害賠償として請求することができます。
年金も収入として考えられるため、逸失利益として請求できるのです。
ただし、どの年金が逸失利益として認められるのかは個別に裁判で判断されることになります。
遺族年金の場合は、受給されていた本人の生活保障として支払われている年金になるので、認められない傾向にあります。
また、障害年金についても同様で、本人の受給分ではない家族の加算分は認められない傾向です。

子どもの場合

子供が交通事故で死亡した場合には、逸失利益として将来に子供が得られていたであろう収入を請求することができます。
通常の場合であれば、死亡時の年齢から67歳までを就労可能年数として取り扱いますが、就労可能年数は18歳から67歳までとなるので幼児の場合は死亡年齢数から18歳までの期間を控除して算出します。
死亡逸失利益の計算式は、基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数です。
つまり、幼児の場合は、死亡年齢から67歳までのライプニッツ係数から、死亡年齢から18歳までのライプニッツ係数を差し引いて計算することになるのです。
ただし、この計算式を用いて自身で算出することは難しいので、弁護士に相談して適切な金額を請求できるようにサポートしてもらいましょう。

まとめ

高齢者や子供が死亡事故に遭った場合、死亡慰謝料以外にも年齢などの要素を考慮した損害の賠償を請求することになります。
非常に難しい問題なので自身で解決するには限界がありますし、何よりも家族を亡くした悲しみの中で問題解決にあたる余裕もないでしょう。
適切な死亡慰謝料をはじめとする損害の賠償を請求をするためにも、是非ご相談ください。