休業損害の計算方法(主婦・サラリーマン・自営業者)

交通事故で怪我を負うと、被害者は仕事を休まなくてはいけない状況になる場合があります。
そうすると、怪我の治療に専念することも大切ですが、被害者としては仕事ができない期間の給料が心配になるものです。
しかし、そういった場合には加害者に対して「休業損害」を請求することができます。
適切な休業損害の金額を受け取るためにも、計算方法を知っておきましょう。
サラリーマンだけでなく、主婦や自営業者でも請求できるので参考にしてください。

休業損害とは

休業損害とは、交通事故によって傷害を負ったことで治療や療養のために仕事を休業しなくてはいけなくなった時に請求できる損害を指します。
仕事を休むことによって得られなくなる収入や賃金の減少額を相手に請求できるのです。
ただし、そのままこれまで得ていた収入から割り出して請求するだけではありません。
算出する基準や職業によって計算方法が異なります。

休業損害の損害額を計算する方法は、「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準」の3つの基準で違いがあります。
計算方法が違うので、金額にも差が出てきます。
任意保険基準に関しては、基準が公開されていないですが自賠責基準よりと同額か少し高めの金額で算出されることが大半です。

自賠責基準による休業損害の計算方法

自賠責基準(※)の場合、被害者が最低限の補償を受けられるようにする保険ですから、金額としては任意保険や裁判基準と比べると低い金額になります。

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した休業損害については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した休業損害については、1日につき原則5,700円です。

休業損害の計算方法としては、1日あたりの損害額を6,100円として算出します。

1日あたり6,100円×休業日数

上記の計算式を持って算出しますが、どんな給料の人でも1日6,100円として計算されてしまいます。
つまり、サラリーマンでも主婦でも、自営業者であっても同じ扱いになるのです。
ただし、休業損害証明書などの立証資料などで1日6,100円を超えるような収入であることが明らかな場合には、1日あたり19,000円を限度額として計算されます。

裁判基準による休業損害の計算方法

裁判基準は、実際の裁判による判例をもとに弁護士が示談交渉や裁判で用いる基準となり、自賠責や任意保険よりも高額の請求が可能になります。
休業損害の計算方法としては、以下の計算式が用いられます。

1日あたりの基礎収入額×認定休業日数

基礎収入額は、自賠責保険のように低額ではなく職業によって違ってきます。
つまり、裁判基準で休業損害を計算する場合には基礎収入額の計算方法が金額を左右する大切なものになるのです。
サラリーマンや主婦、自営業者で算出方法が違うので、それぞれの基礎収入額の計算方法を紹介します。

給与所得者の基礎収入計算

給与所得者、つまりサラリーマンの場合には事故前3カ月の給与の総支給額が参考とされ、基本的に,90日で割ったものが1日あたりの基礎収入額とされます。

事故3カ月前の総支給額÷90日×休業日数

上記がサラリーマンの休業損害の計算式となり、交通事故によって有給休暇を使った場合でも請求することが可能です。
基本的にはこちらの計算式で計算されますが、給与の変動が大きいような職業の場合には、事故1年前の給与の平均額を用いることもあります。
また、仕事を休むことによって賞与や昇給、昇格などに影響があった場合には、これらも損害として請求ができます。

専業主婦の基礎収入計算

専業主婦の場合、給料が発生しないので休業損害は請求できないと思われがちですが、交通事故によって家事ができなくなった場合には請求ができるのです(いわゆる,「主婦休損」)。
1日あたりの基礎収入額は、厚生労働省が毎年発表する「賃金センサス」を基に計算されます。
女子全年齢平均賃金の年収を365日で割ったものが、1日あたりの基礎収入額になるのです。

ただし、家事ができない間ずっと同じ金額を受け取れるわけではありません。
もちろん入院中の期間は100%の金額を請求できますが、そこから家事がどれくらい制限されていたかによって請求額が異なります。
例えば、退院後に2カ月は家事が60%制限され、その後3カ月は40%制限されていた場合には、金額も2ヵ月間は×60%と3カ月間は×40%として計算されるのです。

また、専業主婦だけでなく家事労働に従事する者であれば同様に請求が可能です。
主夫や両親の代わりに家事をする子供、内縁の妻なども主婦休損を請求できます。

自営業者の基礎収入計算

自営業者の場合の休業損害の計算式は、事故前1年間の事業所得金額が参考となります。
個人事業主の場合であれば所得から控除されている金額も含むことや、サラリーマンと違って所得税や住民税などを引く必要があります。
つまり、先に年間手取り額として(事故前1年間の事業所得金額+事業専従者控除額もしくは青色申告特別控除額)-(所得税+住民税+事業税)を算出してから365日で割って1日あたりの基礎収入を算出します。

ただし、交通事故によって自営業の仕事が完全休業となってしまっている場合には、年間手取り額に固定費を加え、年間基準額としてから365日で割ることができます。
これは、完全休業している場合でも家賃や保険料などの負担が発生するため、固定費を休業損害として加算して請求できるのです。

まとめ

交通事故によって仕事へ支障が出ている場合は、休業損害を請求ができます。
計算方法を知っていれば、適切な金額の請求が可能になります。
相手の保険会社との交渉が上手くいかない場合には、弁護士に相談することでスムーズに適切な休業損害を請求できるでしょう。
当方では、休業損害だけでなく示談交渉など交通事故問題のフルポートを行っているので、是非ご相談ください。